暇の無い日常








     勢いで書く初の恋姫SS 『暇の無い日常』 written by 七夜彼方





 「ふああ……」

 書類から目を離して伸びをする。外を見れば最早、朝日が顔を見せようとしていた。

 「桃香?お〜い桃香〜」

 既に机に突っ伏して寝ている桃香を揺さぶる。
 本来なら、徹夜でも絶対に仕事をする彼女も、何日も続けば流石に体が持たなかったのだろう。

 「しゃあない。おぶっていくか……」

 俺は、桃香をおぶると、極力、胸の膨らみを意識して変な気を起こさないように、桃香の部屋へと向かった。

 「…………」





 「おにーちゃーん!ちょっと街に出かけるから、付いて来て欲しいのだ!」

 「ん?ああ、少し待ってな。準備してくるから」

 朝早くから、元気そうな鈴々と約束をして、自分の部屋に戻る。

 「……はあ。鈴々と出かけるって事は……」

 泣く泣く棚からへそくり(と言う名の貯金)を引っ張り出す。
 それでも、街に行った後のことを考えれば、口元が緩んでしまうのだった。

 「よし。それじゃ、行くかな」

 「…………」




 帰ってくると、日差しが真上から照りつけていた。

 「あの……ご主人様」

 「はいはい?ああ、月か。詠は?」

 珍しく月が一人だったので、訊ねる。

 「詠ちゃんは、今小道具の買出しに行ってます。私も行こうと思ったんですけど、詠ちゃんが少ないから一人で大丈夫、って」

 「そっか。それにしても本当に珍しいね。何か手伝いでもしようか?」

 「いえ……実は、その……」

 月は顔を赤くして、頬に手を当てながら言う。

 「その……ご主人様が空腹かと思いまして……少しですけど」

 「え?昼ごはん?」

 「はい……」

 「有難う!今丁度何か食べようと思ってたんだよ。月は良い子だなあ」

 彼女を抱きしめて、頭を撫でる。月は、一瞬強張ったものの、直ぐに身を委ねてくれた。

 「それじゃ、行こうか。場所はどこかな?」

 「あそこの木陰に……」

 「よし、今すぐ行こう。お腹ペコペコだよ」

 「? ぺこ……?」

 「ああ、あっちの言葉。凄くお腹が空いてるって事」

 その答えを聞くと、月は満足そうに微笑んでくれた。

 「…………」



 「ああー、食べた食べた。美味しかったよ、月」

 料理は何と月の手作りで、月によく似合った優しい味がした。

 「お口に合ったのでしたら、嬉しいです」

 「うん。また今度、作ってくれる?いつでも良いからさ」

 「……はい。勿論です」

 「…………」





 「ご主人様〜」

 「お、起きたのか、桃香」

 「昨日はごめんね〜。仕事の途中で寝たりしちゃって……」

 「いや、桃香の方のは粗方終わってたし、残りは俺が片付けといたから、大丈夫だよ」

 「それでもだよ。……はあ。何で寝ちゃったのかなあ、私?」

 「そりゃあ、3,4日も連続で徹夜して寝ない奴がいたら、そっちの方が驚きだって」

 「そうかも知れないけど……」

 「ほら、久しぶりに今日はまだ仕事は届いてないみたいだし、遊びにでも行かないか?」

 「え? でも……」

 返事を渋るのは、昨日の失態を気にしてのことだろう。俺は、そんな桃香の手を少し強引に掴む。

 「へっ!?」

 「ほらほら。時間が勿体無いって。今日はこれから夜まで遊んで、疲れを癒す。それで良いか?」

 「ちょ、ちょっとご主人様ー!?」

 顔を赤くした桃香の手を引いた俺は、早足で街へと向かっていった。

 「…………」





 「それで、ご主人様?」

 「う、うん。何だろう、愛紗?」

 「何だろう、とは何ですか!こんなにも仕事があるというのに!今日一日、一体どこで何をしていたんです!」

 「ごめん……」

 「……はあ。いえ、良いです。桃香様やご主人様に負担が掛かっているのは分かっています。しかしですね……」

 残念ながら、説教を受けているのは俺一人だけ。桃香には『仕事は無い』と嘘を吐いて、早く寝るように言ってあるのだ。

 「しっかしなあ……」

 見上げれば、目の前には書簡の山、山、山。一体どれだけの苦情を集めたらこんな量になるのだろうか。

 「……聞いているのですか、ご主人様?」

 「え?ああ、ごめん」

 しかし、いつまで説教を受けていたところで、仕事は片付かない。ここは思い切って……。

 「なあ、愛紗?」

 「……何ですか?」

 「仕事手伝ってくれない?」

 「…………はあ?」

 全く意味が分からない、と言った表情。まあ、俺も最初からあまり期待はしてないが。

 「だから、手伝い。もしかしたら徹夜になっちゃうかも知れないけど……」

 「……徹夜……明日まで二人きり……ご主人様と……

 「? 愛紗?」

 「しょ、しょうがないですね。主の不手際を修正するのも部下の役目ですから」

 「へ?」

 何故か、愛紗はあっさりと引き受けてくれた。そして、俺の隣に腰掛けて、書簡を一つ開く。

 「あ、愛紗。本当に手伝ってくれるのか?」

 「ええ。これも仕事です。代わりに、と言っては何ですが……」

 「? 何?」

 「……万が一にも無いと思いますが、もしも私が眠ってしまったら……部屋まで運んで下さいますか?」

 「……何だ。今朝のことか?」

 おおよそ、俺が部屋の前を通る時にでも見たのだろう。
 俺も、別に隠れようともしていなかったから、簡単に見つかっただろうし。

 「……はい。ですから、私にも、その」

 ……柄にも無く顔を赤くしてドモる愛紗を見て、苛めたくなるのは俺だけだろうか。いや、他にもいるに違いない。

 「う〜ん。どうだろうなあ?愛紗はなあ……」

 「……私は、何ですか?因みに、体重でしたら桃香様と遜色ないですから運べないことは……」

 「いや、愛紗は可愛いから、おぶらないで、お姫様抱っこで連れてっちゃうかもなあ。寝顔もじっくり見たいし」

 「なっ……!?」

 顔を更に赤くする愛紗。ああ、可愛い。

 「……ふふっ」

 「! ご主人様!何故そこで笑うのですか!」

 「よし、始めようか。あ、愛紗?」

 「……何ですか」

 拗ねている愛紗に、止めの一撃。

 「もし、逆に俺が寝ちゃったら、キス……口付けで起こしてくれよ」

 「!!?」

 ボンっという音と共に、収まってきていた愛紗の顔の熱がまた一気に上がる。
 真っ赤になった愛紗の顔を横目に見ながら、俺は作業を開始したのだった。

 「…………」


 結局、お互いに相手が寝ないかと監視しているうちに、夜は更け、仕事が終わった時にはもう太陽は昇りきっていた。


 「結局、寝なかったな……」

 「あ、当たり前です。ご主人様から直々に任された仕事を放棄して眠る事など、有り得ません」 

 「……そんなに、俺に抱っこされるの、嫌かな?」

 「!? い、いえ。そういう訳では……」

 「よし!なら愛紗!」

 「ひゃ、ひゃい!」

 「今すぐ眠いと言うんだというか言えいやもう言って下さいお願いしますじゃないと今すぐに俺が寝て口付けさせるぞー!」

 「へ?え?」

 いきなりまくし立てた様な俺の言葉に、目を白黒させる。

 「分からないか……それなら、今から俺が言う言葉を復唱してくれ。あ、因みにこれ命令。行くぞ?」

 「は、はい……」

 「ねむいです」

 「……ねむいで「よし、分かった!!」

 間髪入れずに彼女を抱き上げる。

 「ご、ご主人様!?」

 「よし、部屋まで行こう。全く、仕事中に眠いだ何て、愛紗は……」

 「そ、それはご主人様が!」

 「(-д-п)アーアーキコエナーイ」

 「ご主人様!!」

 「…………」





 「ふあ……」

 結局、今日も昨日と同じで、眠いままに一日が始まった。

 「おや、主。随分と眠そうですな?」

 「うん……。二日連続で徹夜だからね……」

 そろそろ、部屋に戻って眠ろうかと思っていた所に、星が現れる。

 「何と。其れはお体に触りますぞ?」

 「ああ。だからこれから寝ようかと……」

 「主。それならば部屋よりも良いところがあります」

 「へ?何処?」

 「まあ、こちらに」

 桃香の時とは逆に、星に手を引かれて連れ去られる。着いたのは……。

 「では。ここに横になってください」

 「ここ、って言われてもなあ……」

 月と一緒に食事をした、木陰。星はその木の下で正座をしている。

 「ま、いっか。この際寝れれば何処でも……」

 影にばったりと倒れる。ああ、風が心地よい。

 「……主?」

 「ん? どうかした?」

 「……私は、ここに、と言ったのですが」

 「ここ、って……」

 星は自分の膝をポンポンと叩いている。

 「ああ、そういうこと」

 頭をずらして、星の膝に乗せる。途端、女の子の匂いとか、柔らかさと言ったものに包まれた。

 「ふふ。素直な主は好きですよ?」

 「何だ。素直じゃない俺は嫌い?」

 「む……」

 どうやら、眠りにつく前の俺は頭が冴えるらしい。久しぶりに、星を言い負かした俺は、

 「……好きに決まっているでしょう

 星の返事を聞く前に、深い眠りに落ちていった……。

 「…………」






 「……ん、んん……」

 長く、深い眠りから目覚める。目を開ければ……

 「あ、起きちゃいましたか……」

 目の前に軍師がいた。

 「って、朱里!?」

 あ、あれ?俺は星に膝枕されてた筈なんだけど……?

 「まさか、この歳でボケた!?それとも睡眠不足で朱里が星に見えたとか!?」

 どてらにしても、かなりショックである。朱里はそんな俺を見てクスクス笑って、

 「いいえ。ご主人様はボケてないし、確かにここに居たのは星さんでしたよ?」

 「な、なんだ……良かったぁ〜」

 ん? では何故に朱里?

 「星さんなら貂蝉さんに誘われて、最高級メンマを食べに行くそうです」

 「また、メンマか……」

 星の中では、最高級メンマ>俺なのだろうか。それはそれで凄い傷つく。

 「あ、でも星さん、凄い悔しそうにしてましたよ?何でも、そのメンマは今日限りで仕入れた物だそうで。
 凄い悩みながら、偶々通りかかった私にご主人様を預けて、泣く泣く買いに行ったみたいです」

 「そ、そうなんだ……」

 ちょっとだけ、傷が癒えた気がする。まあ、しょうがないか、何て思いながら頭を下ろす。

 「へ? ご、ご主人様?」

 「ごめん、悪いけど俺、もうちょっと寝るよ。足疲れたら置いてっていいから……」

 「……そんなこと、しません」

 「そっか。ありがと……」

 朱里の体温を感じながら、またしても意識を落とす。

 「…………」






 目を覚ませば、陽は落ちかけていた。それでも傍にいてくれた朱里に礼を言って、その場を後にする。

 「お。おーいご主人様ー!」

 「ん? どうした?」

 「ちょっと、こいつらを小屋に戻すの、手伝ってくれないか?幾らなんでも数が多くて……」

 「ああ、いいけど……」

 見れば、翠の周りには十頭近くの馬たちが佇んでいた。確かに、幾ら翠でもあの数はキツイだろう。

 「それにしても、他の兵は?この数なら、一人位手伝いに来てもいいだろうに」

 「いや、今日はあたしも少し厳しかったからな。ボロボロになってて、手伝えそうな奴がいなかったんだ」

 「……一人もか?」

 「へ? いや全員確認したわけじゃないけど……」

 「そっか……」

 余程厳しかったのだろう、と言う思いと一緒に、自然に声が出る。

 「んじゃ、今度からは厳しい訓練の時は呼んでくれよ。終わったあとの手伝いくらいなら出来るし」

 「え? いや良いよ。ご主人様は忙しいだろ?」

 「いや。幾ら忙しくても、こんな可愛い子に重労働を全部押し付けるのは、俺のプライドが許さない」

 「Кудрявкаっ!?」

 翠が赤面する。……こっちは真面目に喋ってる心算なんだけどなぁ。

 「あ、あたしは可愛くなんてないし、重労働なんてしてないって!!」

 「駄目。翠の自己申告は基本的に誤ってるから」

 「どこがだよっ!」

 「全部だよ全部。俺や他の奴から見ても、翠は可愛い女の子だぞ?」

 「Анатолиевнаっ!?」

 「訓練や実戦だって……任せちゃってるけど、本来なら翠達が傷つくような事はして欲しくないし……」

 「Стругацкаяっ!?」

 「だから、何か手伝えることがあったら、いつでも呼んでくれ。な?」

 「う、うん……」

 「…………」





 「さて、と……」

 夕飯も食べ、すっかり仕事モードに入る。が、その前に。

 「んで……そろそろ出てきてもいいぞ?」

 「…………」

 静かに、ドアを開けて恋が入ってくる。

 「……ばれてた」

 「うん。ばれてた。実は最初から」

 実のところ。昨日の朝、桃香を起こした時からずっと、背後に視線を感じていた。

 「それで、どうした?何か用事か?」

 「………………(フルフルッ)」

 「そっか。じゃあ、何かな?」

 「…………」

 恋は少し考えると、一言。

 「…………退屈だった」

 「ありゃ」

 結構重大なことかと思っていたので、少し拍子抜け。

 「それで、ご主人様と遊ぼうと思った」

 「それで、後をつけてたの?」

 「…………(コクッ)」

 短い間での頷きだから、肯定だな。

 「それなら、声を掛けてくれれば良かったのに」

 「……掛けようと思った」

 「そうなんだ。それで?」

 「……いつも、誰かが先にご主人様の傍にいた」

 「……ああ」

 そういえば、視線を感じ始めてから、桃香、鈴々、月と続けざまに人といた気がする。

 「それで、声を掛けられなかった?」

 「…………(コクッ)」

 「そっか」

 「ご主人様は、今、することが無い?」

 「ん、えーと……」

 チラッと、一日でまたしても山積みになった書簡を見る。しかし。

 「…………」

 「ま、あんな物は明日にでも即効でやればいいし……」

 恋の寂しそうな顔を見て、仕事をするなんて考えは何処かへ吹き飛んだ。

 「? お仕事は?」

 「ないよ。今は俺も暇」

 ああ、これでまた、明日愛紗に怒られるんだろうなあ。でも、しょうがない。
 原因が恋だと言えば、愛紗も許してくれるだろうし。

 「それじゃ、どうする?一応、恋がやりたい事なら出来るだけやるけど」

 「…………寝る」

 盛大にずっこけた。

 「ね、寝るって、今?」

 「…………(コクッ)」

 い、一体俺の決断は何だったんだ?
 まあ、よく考えれば、ずっと俺をつけていた恋は、俺以上に寝ていないんだろう。眠いのも当然か。

 「…………眠い」

 「うん。じゃあ、そこのベッドで寝ていいよ」

 「…………………………(コクッ)」

 む。長い間で頷いたということは、否定?

 「…………」

 恋はベッドに入らずに、小動物的な目で俺を見つめている。

 「……星や朱里は、ご主人様と一緒だった」

 一緒……?膝枕のことだろうか?

 「…………恋は一人」

 そこまで言われて、ようやく理解する。全く、いつもみたいに素直に言えばいいのに。

 「そうだな。一緒に寝ようか」

 「…………(コクッ)」

 仕事を放棄して、恋と一緒にベッドに入り、彼女の満足そうな顔を確かめる。そのまま、彼女の体を抱きしめた。

 「……あったかい」

 「ああ。俺も温かいよ」

 そんな感じで、その日の夜は更けていった……。








 で、結局。

 「ご主人様、起きていらっしゃいますか……って」

 「あ。お、お早う、愛紗」

 「……ご・しゅ・じ・ん・さ・ま?」

 「な、何かな〜?」

 「何かな〜、ではありません!!」

 翌朝、愛紗にいつも以上に長い説教を喰らったのであった……。















   後書き

 つう訳で初めて、リトバス以外の物に手を出してみました。
 とは言え、恋姫やったのは随分前のことなんで、キャラの呼称が分からん!
 しかも、恋のssの筈が、只のハーレムになってるし!
 てか、何故に桃香だけ真キャラ!?

 と、色々意味不明ですがご容赦を。キャラは、只単に好きなのを詰め込んだだけなのですよ。
 あと、翠の叫びが、繋げるとクドになるのは使用ですのであしからず。
 愛紗と翠の文の量が、明らかにメインの恋の文と変わらないと言う不明さも気にしないで下さい。愛ゆえです。



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 それでは、読んで下さって本当に有難うございました!!





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