とっても……!!


 「よし!これで終わりっと」

ルーティは腰に手をあて、満足そうに微笑んだ。
目の前では大量の洗濯物が風に揺れている。
今日は快晴、雲ひとつない澄み切った青空に色とりどりの洗濯ものがよく映える。
ここはデュナミス孤児院2階のバルコニー。
庭で遊んでいる子供たちの元気な声が聞こえてきて、自然と彼女の表情も柔らかいものになる。
ルーティはゆっくりと目を閉じ、子供たちの声に耳をすませ、しばらく穏やかな陽の光と心地よい風を全身で感じていた。

 「……だわ」


コンコン

 「ルーティ、お疲れさま。少し休憩しないか?お茶いれたんだ」

バルコニーのドア付近の壁を軽くノックし、声をかけてきたのはスタン。
彼女の夫である。
ルーティはさっと目を開いて、声がした方へ顔を向けた。
彼の手には湯気がたちのぼったマグカップを2つ乗せたトレーがある。

 「あら、気が利くわね。ありがと!」
 「どういたしまして」

バルコニーに入ってきたスタンはトレーをテーブルに置き、ルーティの横に並んで伸びをひとつ。

 「おっ、ここまで子供たちの声が聞こえてくるのか、今日も元気だなぁ」
 「おかげで、毎日洗濯ものが山のようにあるわ」
 「ははっ、みんな泥だらけになるまで遊んでるもんな」
 「特に誰かさんの子供がねー」
 「そうそう、誰かさんの」

そう言ってお互いを突っつきあっては、あははと笑う。
ここの子供たちはみな孤児だが、ただ1人カイルと名付けられた男の子だけは違う。
カイルはスタンとルーティの実の息子だ。
だからと言って、カイルだけ特別扱いするのではなく、性もデュナミスにし、
他の子供たちと同じように育てているのだがそこはやはり親心、2人の話題にあがる確率はどうしても高くなる。
それくらいのちょっとした贔屓目なら、きっと神様も許してくれるはず。

 「……そういえばさ、オレが声かける前、ルーティは何をつぶやいてたんだ?」

ひとしきり笑った後、スタンは落ち着いた声で尋ねた。
お茶を持ってきた時、バルコニーで目を閉じて何かをつぶやいていたルーティの横顔があまりにも綺麗だったので、
スタンは気になっていた。

 「え?もしかして聞こえてた?」
 「いや、何を言ってたのかまでは。言いたくないなら、無理に言わなくていいよ」
 「…………」

じっ、とルーティがスタンを見つめていると、彼はふんわりと微笑み返してくれた。
その笑顔に引き寄せられるように、ルーティはスタンに抱きついた。
そんな妻の突然の行動に夫は特に驚くこともなく、腕をまわして抱きしめてくれる。

 「何かあったのか?」
 「ううん、そうじゃなくて、その……」

口ごもったルーティに、スタンは続きを急かすわけでもなく、黙ったまま。
おそらく無意識でだろうが、スタンはルーティの中にある貴重な素直さを引き出すのがとても上手なのだ。
そんな彼が愛しくてたまらない。
ルーティはぎゅっと、スタンの服を掴んで、少しずつ言葉を紡ぐ。

 「……あのね?こうやって孤児院を経営して、たくさんの子供たちに囲まれて、あんたと家族になれて、
  カイルが生まれてあたしも本当の“母親”になれて」
 「うん」
 「みんなで毎日たくさん笑って。すごく…幸せだなって思ったの」
 「そっか。良かったな、ルーティ」
 「……うん」

もしかして泣いてるのか?とスタンは思ったが、バッと勢いよく顔をあげた彼女と目が合えば、
先ほど見た綺麗な横顔よりもさらに美しい笑顔がそこにあった。

 「スタン、あんたのおかげよ。あたしが今こうして幸せを感じられるのも、全部!」
 「オレは特に何もしてないよ?」

ルーティは首を横にふり、再び顔をスタンの胸にうずめる。

 「こうして、あたしと一緒にいてくれてるじゃない。
  あんたといると不思議ね、捻くれ者のあたしでもちょっとだけ素直になれるわ。
  ねぇスタン、あんたと出会えてあたしとっても幸せよ」
 「うわぁ、それってすごい愛の告白じゃないのか?」

普段なかなか聞けないそんなルーティの言葉に、思わず頬がゆるむスタンだったが、
彼女に背中にまわされた手で、ツン!と後ろ髪を引っ張られて、いてっ!と間抜けな声をあげてしまった。

 「あら、心外ね!
  いい? あたしのあんたへの想いはこんな言葉だけじゃ表せないわ。
  きっと一生かけても伝えきれないくらいよ、覚悟しておきなさい」
 「ははぁ〜、まいりましたルーティ様」
 「よろしい!
  ………………で?」
 「ん?」
 「あんたはどうなのよ?」

ルーティは少し身体を離し、真っすぐスタンを見つめながら問う。
聞かなくても、あんたの答えなんか分かりきってるわ!といった自信に満ちた目をしている。
スタンは見透かされてなんだか悔しい気もしたが、愛されているとルーティが実感できるくらい
自分の想いが伝わっている証拠なのだから、おとなしく負けを認めた。

 「ルーティと同じだよ。
  こんな言葉だけじゃオレの気持ちも全部表せないけど……愛してる」

だから、ルーティも覚悟しとけよな?と、耳元に低く囁いてやると、一気に彼女の体温が上昇した。


スタンが持ってきたお茶はすっかり冷めてしまったが、2人の熱は上がる一方である。





「姉さんを幸せにしたい!」と思い続けて数か月。
こきあさんの某曲に出会い、これルーティだったらちょうかわえぇぇぇーー!!
というところから、妄想してみました(笑)
たぶん、その曲知ってる人は「あぁー」ってなるほど、影響受けてます。
個人的に、ルーティが心から幸せだって感じれるようになるのは、
カイルが生まれてからだろうなーって思うので、今回は夫婦スタルー。
ここまでお付き合い下さった方に感謝をv (2011.10.30)



ブラウザでお戻り下さいませ。


2style.net