中尉争奪戦?



俺は鋼の錬金術師、エドワード・エルリック!
あぁ?何だ?こんなにちっさいのに、国家錬金術師なのかって?  だぁれが、ミジンコどちびかあぁー!!!(言ってない)
ったく、ちっさい からってバカにするな……俺だって、一人前の男だ!…す、好きな人だっているんだぞ!
それは誰かって?
野暮な事聞いてんじゃねーよ!
なんだよ!?  あーもうっ!しつこい!!!
……絶対笑うなよ? それは……



  「あら、エドワード君にアルフォンス君。今日も大佐に用事?」
  「こんにちは、ホークアイ中尉」
  「とりあえず、兄さんが東方司令部に行きたいって言うから…」
  「あ、アルは黙ってろ!」
  「? せっかく来てくれたのだけど、大佐は今会議中でいないの。ちょっと待っててくれる?」
ホークアイはとりあえず応接室に兄弟をとおし、お茶を入れに部屋を出ていった。
  「ほら、兄さん。この時間、大佐は会議だって言ってたじゃないか」
  「すっかり忘れてたんだよ」
本当はこの時間を狙って来たなんて、口が裂けても言えない。
大佐と中尉が離れている時間。
  「もう、兄さんってしっかりしてそうで、どこかぬけてるよね」
  「っるせー、ほっとけ!」

そうこうしているうちに、ノック音が聞こえホークアイがお茶とお菓子を持って戻ってきた。
  「はい、どうぞ。どうやら会議が長引いてるみたい。ごめんなさいね」
  「それなら、ホークアイ中尉も一緒にどう?」
エドはティーカップを指差して言った。
  「兄さん、仕事の邪魔しちゃ悪いよ」
  「いいのよ、アルフォンス君。ちょうど休憩しようと思っていたところだから」
  「おっ、やった!そういや、こうしてホークアイ中尉とゆっくりしゃべるの、もしかして初めて?」
  「あら、そうかもしれないわね」
ホークアイは仕事中では見せないような笑顔をエド(とアル)に向けた。
エドの心拍数がはねあがる。
そんな顔で微笑むなんて反則だ!
一瞬頭が真っ白になったエドだが、なんとか平静を保つことができた。
  「お、俺ホークアイ中尉の分のお茶入れてくる!」
  「あら、いいのよ?自分でやるわ」
  「俺達に気をつかわないで、ゆっくり休憩してて下さい!」
エドはいきなり立ち上がったかと思えば、物凄い速さで部屋を出ていった。
  「もう、兄さんったらドアぐらい静かに閉めなよ…」
  「フフッ、可愛いわね」



やっと終わった…。
こんなに長引いた会議は久しぶりだな…。
とにかく、中尉に美味しいお茶でも入れてもらおう。できれば二人でティータイムといきたいところだが…。

ロイは部下たちのいる部屋に戻り、あたりをぐるりと見渡す。
  「あれ?ホークアイ中尉はどうした?」
  「あっ、大佐お疲れ様です」
  「ホークアイ中尉なら、応接室でエルリック兄弟とお茶してるはずっスよ」
  「何!?」
  「さっき給湯室に行ったら、エドワード君に会いまして…」
  「アイツがあんまり楽しそうにお茶をいれてたもんスから、どうしたんだ?と聞いたら
   満面の笑みで『ホークアイ中尉とお茶するんだ』って」
口々に話すハボックとフュリー。
  「ははは、ホークアイ中尉人気者ですね」
  「子供にもモテるほどな!っにしてもエドの奴、大人の女性が好みだとはなー!」
二人は笑い出したが、怒りに震えている三十路前が一人…。
  「大佐?どうしたんスか?」
ハボックが言い終わらないうちに、ロイは応接室へ猛ダッシュしていた。
  「…今日は大佐に関わらないようにしよう」
  「…はい」



許さん 許さん 許さん 許さぁーん!!!
鋼のと中尉が二人仲良くお茶だとっ!?  断じて許さん!消し炭にしてくれる!
ロイは完全にアルの存在を忘れているようだ。

バンッ!!
応接室にたどり着いたロイが勢いよくドアを開くと、部屋の中の三人が一斉にこちらを向いた。
すぐにでも指を擦って燃やしてやろうと思っていたのに、なんとエドの手前にホークアイが座っていてできない。
マヌケにもロイは右手をかざしたまま突っ立っていた。
  「……いくら大佐でも、ノックぐらいはして下さい」
  「っ!私は先程まで長い長い会議だったのだがね。君は労いの言葉もかけてはくれないんだな!」
こんなことを言うつもりではなかったのに……中尉に怒りをぶつけてしまうロイ。
すると、ホークアイは一瞬目を見開いたかと思うとため息をついた。
  「それが大佐の仕事でしょう」
  「!!」
普段なら『つれないな』などと軽く言ってのけることができるのだが、今はその余裕がない。
それに鋼のがニヤリと笑い、完璧この状況を楽しんでいる様子を見ると、さらに腹の底が煮え繰り返ってくる。
あまりの怒りで言葉を失っていると、アルが声をかけてきた。
  「あのっ、大佐も一緒に…」
  「大佐は仕事があって忙しいんじゃないの?なっ!大佐」
落ち着け!相手は子供だ!それに、これ以上中尉の前で怒りを露にするのも嫌だ。
今にも焔を繰り出そうとするのを必死でこらえ、やっとのことで反撃の糸口を見つけた。
  「…いや、私もまぜてもらおう。なんせ君は私に用があって来たのではないのかね?」
  「は?」
  「なんだ、君は用もないのにここへ来たのか?」
  「そ、それはっ…!」
『ホークアイ中尉に会いに』
そんなこと本人を前にして言えるはずないだろう?鋼の。
ロイの思惑通り、エドは俯いたまま気まずそうにしている……。
はずだったのだが。
  「ほっ、ホークアイ中尉に会いに来たんだっ!悪いかよ!!」
エドが突然立ち上がりぶっちゃけたので、どう反応していいものか、一同沈黙。
  (えっ!えっ!?そうだったの!?兄さん!)
  「……フッ、開き直ったな、鋼の!!」
  「何とでも言えっ!!」
睨み合ったままのエドとロイ。どちらもいっこうに引こうとしない。
いつ派手な喧嘩になるのかとヒヤヒヤしながら見ていたアルだったが…………。

バンッ!!!
  「大佐もエドワード君もいい加減にしなさい!!」
耳を劈くほどの声。テーブルを叩いた衝撃で、お茶がティーカップの中で大きく波打っている。
今まで黙っていたホークアイがとうとうキレたのだ。
アルが立ち上がっている三人を見上げながら、ハボック少尉にでも助けを求めに行こうかとオロオロしていると、驚いたことにエドが突然頭を下げた。
  「あのっ……ごめんなさい…!
   …俺、何の承諾も無しに突然中尉に会いに来て…それで大佐と喧嘩して困らせて……本当にごめん!!」
  「兄さん……」
本気で怒っているホークアイを見て、エドは今まで自分のことしか考えていなかったと思ったのである。
ホークアイは表情を緩め、必死に謝るエドに近づき少し屈んで目線を合わせた。しかし、エドは目を伏せたまま。
ホークアイは優しく声をかける。
  「エドワード君って、とても素直なのね……さっきは怒鳴ってごめんなさい。
   エドワード君が私に会いにわざわざ来てくれたなんて嬉しいわ。
   でも、今日はとりあえず帰って、気持ちを落ち着けなさいね」
  「…………」
  「それから、今度来る時は前もって連絡してちょうだい。
   そうしたら、もっと美味しいお茶とお菓子を用意して待ってるから、ね?」
やっと顔を上げたエドと目が合うと、ホークアイはふんわりと微笑んだ。
まるで母親のように。
  「……うん、今日はもう帰るよ。迷惑かけてごめんなさい」
  「いいのよ、子供は周りにたくさん迷惑をかけて成長するんだから」
そうこうしているうちに、ロイが応接室を静かに去って行った。
  「あっ、大佐!…………ホークアイ中尉、いいんですか?」
  「ありがとう、アルフォンス君。大佐は後で何とかするから気にしないで。とりあえず、二人とも下まで送るわ」


駄目だ。
これ以上あの場に留まることはできない。私が今まで見聞きしたことの無いような優しい笑顔と声。
それが自分にではなく、他の男に向けられているのをこれ以上見るのは……。
あの時、鋼のはすぐに謝っていたが、その子供特有の素直さが心底羨ましいと思った。大人になると「ごめん」を言う機会を一度逃せば、なかなか言えなくなる。
だがこの先、中尉と気まずい雰囲気になるのだけは避けたい。
少しでいい、私にもあの素直さがあれば……。
よし、ここは腹をくくってだな……ファイトだ!ロイ・マスタング!!


  「ハボック少尉、大佐は執務室かしら?」
  「そうっスけど……なんかあったんスか?大佐かなり落ち込んでたんで」
  「え?まぁ……」
  「早く何とかして下さいよー、仕事が溜まっちまうっスよ〜」
怒ってるのかと思っていたのだけど…落ち込んでる?
ホークアイはハボックの嘆きを聞きながら、大佐のことを考えていた。
  「とりあえず、行ってみるから、嘆いていないで仕事進めててね」
ホークアイは執務室へと向かった。


  「すまなかった!!!」
部屋に入ってドアを閉めた途端、彼の第一声がこれだった。柄にも無く顔を真っ赤にして、今にも泣きそうな顔で。
  「その……労いの言葉をかけてくれないーとか、厭味っぽく言ったこととかだな…」
  「あら、そんなことですか」
  「そっ、そんなことって君!!」
  「どうせ、エドワード君に大人気なく嫉妬していたんでしょう?
   それで、怒りで理性が吹っ飛んで言うつもりでもないことを口走ったんじゃないですか?」
  「うっ!図星……」
  「もう…どれ程の間、私が大佐の傍にいると思っているんですか。そんなことお見通しです!
   ですから、全然気にしていません。 そりゃ、最初はちょっと癇に障りましたけど
  「本当に?」
  「えぇ、本当です」
  「はぁ〜、良かった。
   君に嫌われて、「こんな上司にはついて行けません」なんて言われたらどうしようかとずっと思っていたのだが…」
ロイはホッとしたのか、一気に脱力した。
ホークアイはロイがそんなことで落ち込んでいたのかと呆れると同時に、淋しく感じた。
私がそんなことで貴方を嫌うなんて。そんなことで貴方を守りぬくという私の決意は揺らぐはずないのに…。
  「……大佐は…そんなことで私が貴方から離れると思っていらっしゃるのですか?」
  「え?」
  「私は大佐のことをなるべく…理解しているつもりです…けれども、大佐は私のことは理解してくれていないのですね」
  「……中尉」
  「あっ…すみません……!」
ホークアイは口を手で覆った。
こんなことを言うなんて…思いっきり自己中だ。
それに上下関係が厳しい軍において、部下が上官に向かって自分のことをわかってくれ、だなんてそうそう言えるものでもない。
あまりの恥ずかしさに、俯いて視線をそらす。視野の片隅でロイがこちらへ近づいて来るのがわかった。
  「……やっと言ってくれたな」
  「…えっ?」
  「君は自分のことに関してはなかなか本当の事を言わない。例えば、平気なふりをして何でも背負い込んでいたりとか。
   その…もっと言葉で示してはくれないかね?
   私は女心をよく心得ているつもりだが…君のこと、つまり本命のこととなると疎くなるんだ」
  「なっ、…本命だなんてからかわないで下さい!」
ロイは頬が紅潮するホークアイの手を優しくとり、顔をのぞき込んだ。
  「からかってなどいないさ。おや、顔が真っ赤だぞ?中尉」
そう言って意地悪く微笑むと、ホークアイはさらに顔を真っ赤にし、黙り込んでしまった。
彼女が何も言わないからと言って、私に好きだと言われたことが嫌というわけではない。
本当に怒っていたり嫌だと思っていたら、顔など赤らめず銃の一発や二発くらい撃ち込んできそうになるものだ。
と、この点に関してはロイにお見通しだったりする。

本当にこの人は……!
さっきまで子供みたいに嫉妬していたかと思えば、今は自分をドキドキさせるほど大人びた雰囲気を放つ。
  「……私もまだまだ、知らないことだらけですね」
  「ん?」
  「……大佐のことが…」
そんなもの、と言ってロイはホークアイの手をぎゅっと握って微笑んだ。

―― これから時間をかけてお互い知ればいいことじゃないのかね? ――




っと、まぁこんな訳で、俺の恋は最初から負け戦だ。
だからって簡単に引き下がるエドワード・エルリック様じゃねぇぞ!
いつか、ぜってーあいつからホークアイ中尉を奪ってやる!!
あんたも応援よろしくたのむぜ!
じゃあなっ!
あっ、このことは絶対誰にも言うなよっ!!!


おわり



はい!ロイアイ←エドでしたー。
実はエドアイも結構好きですv
今度は純粋にエドアイも書いてみようかと検討中(笑)
大佐が激しく子供になってしまいましたが、最後はバシっとキメさせたつもり…です?(苦笑)
ではでは、最後まで読んで下さりありがとうございましたv (2004.5.10)

戻る


2style.net