柿以上の男?


 「九郎さん、柿をもらったんですけど、一緒に食べませんか?」
 「そうだな……ちょうど休憩しようと思っていたところだ。
  剥いてやるから、こっちに来い」
 「やった! 私、皮剥き苦手なんで助かります」
 「まったく、花断ちが出来て皮剥きが出来ないなんて、お前も変わった奴だな」
 「あれとこれとじゃ、全然違いますよ!」

そんなことを言い合っている内に、九郎は小刀で柿を小さく切り分け、するすると皮を剥いていく。

 「わぁーっ、速い速い! さすが九郎さん、良いお嫁さんになれますね!
  (その服も、ひらひらしててエプロンみたいだし)
  ぷっ!」
 「誰が嫁だ!
  あ、お前今笑ったな! 何を想像したかは知らんが失礼だぞ!?」
 「1個もーらいっ!」

ひょいっと、望美は切り分けられたばかりの柿を横からつまむ。

 「おい!人の話を聞け!」
 「うーん、甘くて美味しい!」

九郎が柿を切り終え、手をぬぐいながら視線を望美に向けると、彼女は幸せそうな顔で、柿を頬張っている。

 「まったく、お前という奴は……」

九郎は呆れつつも、望美に優しい眼差しを向ける。

戦の時は男顔負けで、果敢に立ち向かって行く源氏の神子。
だが、こんな表情を見ると、彼女が普通の女性だということを改めて実感する。
あの凛とした表情も良いが、今のような笑顔の方が彼女には似合っている気がする。

いつもこんな風に笑わせることが出来ればいいのだが、どうも口が悪くていけない。
気がつけば、いつも望美を怒らせることばかり言ってしまうのだ。
しかも、今彼女を笑顔にしているのは九郎ではなく、この柿。

 「(……俺は柿以下か、情けないにも程がある)
  はぁ〜」
 「……な、何なんですか?
  さっきから、じっとこっち見てたかと思ったら、ため息までついちゃうし」
 「あっ、いや、そのー…のっ望美があまりにも嬉しそうに食べるから、
  そんなに柿が好きだったのかと思ってな」
 「……そういうわけじゃないんですけど。
  (九郎さんに剥いてもらったから嬉しいんじゃない、この鈍感!)」
 「? 何だ?」
 「何でもあ・り・ま・せ・ん!
  あ、そうだ!九郎さんも柿食べましょうよ。私が食べさせてあげますから。
  はい、あーん」

望美はここで九郎に腹をたてるのは筋違いと思いつつもなんだか悔しいので、からかってやることにした。
柿をひとつまみして、九郎の口元までもっていく。
すると、望美の思惑通り、九郎は顔を真っ赤にしてうろたえた。

 「おっ俺は小さい子じゃないんだ!自分で食べられるっ!!」
 「ふふふ、九郎さんたら顔が真っ赤、かーわいー!」
 「かっかわっ…望美!大人をからかうんじゃない!」
 「いいもーん、九郎さんがいらないんだったら、私が全部食べちゃいますから」

こんなに甘くて美味しいのにねーと呟きつつ、望美が柿を口にしようとしたその時。


ぐい!


 「え?」

強引に腕を掴まれ、気がつけば柿は九郎の口におさまっていた。
しかも、柿をつまんでいた望美の指ごと。

一瞬の出来事に、望美が状況を飲み込めず呆然とする中、九郎はちゅっと音を立てて望美の指を軽く吸い、雫一つ余すことなく柿を味わう。

 「……確かに、甘くて美味いな」

望美の腕を放し、九郎がいつもより落ち着いた声でそう囁いてやると、今度は彼女がみるみるうちに真っ赤になり、何か言おうと口をぱくぱくさせるが、うまく言葉が出てこない。

 「〜〜〜〜っ!!!」
 「さっきの仕返しだ。 お前の顔も真っ赤だぞ?」

いたずらが成功した子供のように笑う九郎。

やられた!
もう恥ずかしくて泣きそう。
望美は半泣きになりつつも最後の意地でキッと目を吊り上げて、九郎を睨みつけて捨て台詞を吐いた。

 「九郎さんのばかっ!!」

ばたばたっと盛大に足音を立てながら、部屋を出て行く望美。
結局、今日も彼女を怒らせる結果になってしまった九郎だったのだが。
顔を真っ赤にして照れた望美も彼女らしくて、良いなと思ってしまう。
望美の新たな一面を引き出せた、と少し勝ち誇った気分になれた。
何故なら、柿は彼女にあんな表情をさせることは出来ないのだから。

 「よし、これで俺も柿以上の男になったぞ!」

九郎はこぶしを握り、満足気に微笑んだ。















 「もう、九郎殿ったら。望美をあまりいじめないでいただけるかしら?」

突然声が聞こえ、驚いて九郎が振り返ると、朔、弁慶、景時がくすくすと笑っていた。

 「おおおお前たちっ! いつからそこに!?」
 「最初からいましたよ。こういう事は今度からよそでやって下さいね。
  しかし、君があんな大胆な行動に出るとは思いませんでした」
 「いや〜、見せつけられちゃったねぇ〜」
 「!!」

九郎は先ほど自分のしたことを改めて思い出し、また顔を真っ赤にするはめになったのだった。





スーパーで柿が売り出されているのを見て、降って湧いた九望話。
というか、九→←望って感じですかね(笑) まだ、キャラが掴みきれてませんが、九望って本当良いわぁーvv
そして、九望を見守る(からかう)他メンバーたち…という構図が非常に好みです!(たぶん、モンゴルEDのせい・笑)
んで、どう見ても九郎さんの服装(十六夜バージョン)が、エプロンにしか見えないっていう…(笑)
ここまで読んで下さった方々、ありがとうございました!(2008.9.29)



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