Story

考古学の掟

3

ボーイズラブ・ストーリー

18禁を避けるためエッチシーン回避。

 

教授は、丁寧に汚れを拭ったあとも直樹を床の上に抱きしめたまま離そうととしなかった。

「生徒の顔を見ないようにしていた…。けど後悔はしていないよ。こうして君を抱けたから」

そう言って直樹の唇を再び熱く貪った。

「明日辞表を提出して来る。まだ夏休みだから、噂もそう広がらないだろう。いつの間にか教授が辞めていたということでうやむやになるだろう。ちょうどいい」

「……」

痛みは収まらなかった。
犯された部分が裂けるように焼け付く痛みで疼いていた。

「これだけは言っておく、こんな事をしたのは初めてだ」

 

 

あのあと、どのようにしてあの部屋を後にし、下宿に辿り着いたのか、記憶が定かでなかった。

どんなに弁解されてもそれが初めてということは信じられなかった。

自分の生徒たちを、ああしていつも毒牙にかけているのだと、直樹は思った。

肉体は痛んだが、心は教授に勝っていた。

愚かな男、と直樹は思った。

それなりに、功なり名を遂げて、日本の考古学界にも末端といっても名を連ねていたはずだ。
著作もあり、有能な研究者でもあった。

それがひと皮剥けば自分の生徒に欲望を向け、性処理を強要する俗物でしかなかったのだ。

直樹はまだ汚れが残っているような気がして、風呂で丹念にシャワーを浴び続けた。

 

***

 

資料室にはもう行かなかった。

大学に入り、一般教養過程で考古学概論を選択して、考古学の面白さに目覚めた。

普通なら発掘現場に通い、発掘された資料に興味を持って、考古学という学問の世界へ入るのだろう。
或いは、たまたま自分が発見した古い破片が古墳時代の土器だったりしたことで、考古学への興味を持つことになるのだろう。

だが直樹は、教授の授業でその学問への興味を持った。そしてフィールドに参加したいと思った。
考古学を専攻し、将来はこの学問に携わりたいと、そうまで考えるようになっていた。

要するに、と直樹は思った。

彼は傾倒していたのだった。あの時まではあの教授に。

 

学校の近くの本屋に、何気なく入った。

いつも真っ先に目が行くのが、日本史、古代史のコーナーだった。
そこにはあの教授の著作が並んでいる。

下宿には1冊残らず、それらが本棚に収まっている。
いつかサインを貰おうと思って、買っておいた。

本屋に並んでいるその本を引きちぎりたい欲求を押えて背表紙を眺めた。

 

大学の教務課に行った。
その入り口で2時間待った。

教授が、背広を着てやって来た。

直樹を見かけると、驚いたようすをした。

「淡地。どうした」だがすぐに落ち着いて直樹に話しかけた。

「提出するのですか」

「そうだ」

教授は短く答えて懐から辞表を出した。

「本気ですか」

教授は頷いた。

「だから訴えるのは見合わせてくれないか」

悲しげにそう言った。

直樹は教授の辞表を奪い取ると、それを破った。

 

「何をする」

教授は驚いて、次の言葉を詰まらせた。

「ひ、必要ですから」

直樹は喘いだ。

「え?」

「教授は、大学に必要な人ですから」

「……」

「教授の業績は素晴らしいもので、考古学界でも認められている。こんなことでこれまでの実績が台無しになってはいけないと…」

教授は、破り捨てられた辞表を床から拾った。

「淡地…、それが理由か」

教授は、直樹の顔をじっと見た。

「君は、愚かだ」

「…教授も」

なぜか直樹の頬に、涙が伝った。

END

 

あとがき

大学の教授はスケベーだ、との認識があります。
もちろんそうではなくて、真面目に学問している人もいるでしょう。
でも私の中では、教授というものはすべてスケベー。

という発想から思いついたものですが、私の妄想するフィクションの世界では人物を悪者にはしたくない、という思いがあり、ハッピーエンディング採用。お粗末(^_^;)。

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