紺青の海の行方
05/9/4
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言われたとおり四つ這いになろうとしたが膝が立たず、ベッドにうつ伏せの形になってしまった。
男は黙って遙の上に伸しかかった。
遙の首筋に唇を這わせて来る。
「……」
手が遙の肩から胸へとゆっくり滑り、乳首へ到達した。
あやすようにそれを、男の手が揉みしだく。男の指が巧みに遙を昂めてゆく。
女にするような愛撫を施されて、身体が震えた。
舌が、首筋から背を這い回っていた。
男の愛撫は丁寧で巧みだった。
気味が悪いほど、優しかった。
身体の敏感な部分を刺激して、ゆっくりと追い詰めていく。…女として扱われていると、思った。
男が遙の顔を仰向かせ、唇を塞いだ。
口をこじ開けられ、舌を激しく吸われる。
頭のてっぺんにまで快感が走った。
男の舌が遙を追い、遙が応えるまで口腔の中で遙を蹂躙する。
女の子と交わしてもこれほどの快楽を味わったことがなかった。
口付けだけで、身体が溶けてしまいそうだった。
男の指が、遙の腰を捉え、そこを犯し始めた。
「あっ」
腰が引けた。
この前の時の痛い記憶が身体に残っていたのだ。
男が宥めるように遙の唇を塞ぎ、指で後ろを解す。
「遙はまだ、酒が残ってるな。…身体が桜色や」
男が低く囁いた。
解され、施され、液体で潤されても、痛みは起った。
痛みの他に、力で適わぬゆえに男に穢されたという思いが立って、貫かれることに屈辱を感じる。
だがすぐに感情はなくなり、男の動きを追うだけになった。
腹の中で蠢く異物の大きさと異様な感覚に、なにも考える余裕がなくなってしまうのだ。
快感よりも、圧迫感に支配される。
「前立腺マッサージて知ってるか」
突然背後から昏い男の声がした。
「女にしてもらうよりワシの方がええかもしれへんぞ」
男が身じろぎした。拍子に遙の身体も浮く。
遙の持ち上げた腰に、平行に自分の腰を男が穿つ。
「あっ、ああっ…、」
下半身から、脳天まで一気に鋭い快感が貫いて行った。
男が狙いを定め、腹の中の一点を責めて来た。
突かれる度に身体全体がスパークする。
切ないような、甘いような気持ちが溢れ、訳もなく何かに縋りつきたくなる。
遙の前の部分が刺激され、ビクビクと脈打つ。
男がそれをぎゅっと握り締め、後ろを深く穿って動きを止めた。
「ええやろ」
「うう…うう」
このまま快楽を解放して欲しい。
早く楽にして欲しい。
男がまた唇を貪る。
そうして、遙の片方の足を持ち上げるとぐるりと身体を反転させ、繋がったままで遙を仰向きにした。
あられもない姿が男の眼の前に曝される。
勃ち上がったそこを手で隠そうとすると、その手を封じられる。
腰を持ち上げられ、膝を抱えられて、男の抽送を受止めさせられた。
声を出したが、自分でぞっとするような甘ったるい声だった。
「―――っ」
男が、遙を狂わせる部分を、再び正確に突いて来た。
「い、いやだ…」
遙が伸し掛かっている男の身体を押しのけようとする。
その手も簡単に絡め取られ、掴まれてベッドの上に張り付けられた。
「あ――っ」
他愛もなく遙は極まり、自分の腹の上を汚した。
***
呼吸が整って来たころに、男がベッドに戻って来た。
寝室にある小さい冷蔵庫からスポーツ・ドリンクを取り出して来る。
同じものが一ダース入っていた。
男は一口飲んでサイドテーブルに置き、遙の横たわるベッドの横に腰掛けた。
ティッシュを摘み上げ、遙の尻に当てる。
「いきめ」
「す、すみません。自分で、します」
男に借りを作りたくないとばかり、男の手からティッシュを奪って、遙は自分の身体を拭いた。
「…アホ」
男はもう一度ドリンクを飲んだ。
「遙の身体はまだ桜色や」
どきりとした。
急速に襲って来た性の愉悦が、頂点を極めたあと嵐のようにさっと引いてしまい、忘れ去った今は、先ほどの狂乱を思い出したくもないのだ。
男にドリンクを勧められ、一口飲んだ。
寝室に、ごくりと飲み干す音が響く。
「―僕を、あの」
遙は言い淀んだ。
「鴨川に浮かべるつもりですか」
男は怪訝そうに遙を見、そして一瞬ののち何ごとか思い出したように苦笑した。
「鴨川で泳ぎたいんか。鴨川は川底が浅い。膝までもあらへん」
「…そうなんですか」
間抜けな返事をした。
「―僕を、…殺すんですか」
「アホ、ワシをヤクザみたいに言うな」
「――。」
「恐いか」
男がもう一度スポーツドリンクを手に取る。
「ワシが恐いのか」
「―恐いです」
男はまじまじと遙を見た。
恐いと言ったが、落ち着いているようにも見える。
男の欲望をすでに受け止め、処理を終り、自分の欲望も吐き出したあとの今は、遙の気持ちも少しは楽になっていたのかもしれない。
男はベッドの端に腰掛けたまま、遙に手を伸ばして、遙の身体を後ろから抱きすくめた。
「遙は可愛い」
そう言って、遙のむき出しの肩に、唇をつけた。
「何も恐がることはあらへん。いやな思いはさせへん。遙は女以上や」
さらっとそう、口にした。
男の手が、遙の髪を撫でる。
「…」
遙は男の抱擁を逃れた。
男の言葉を聞かなかったことにしたい。
男の罠から、逃れたいのだ。
次に言うべき言葉を必死で探した。
「…何もされなくても誰にも言うつもりはなかったです。全部忘れてしまうつもりです。…だからもう、終りにしてください、なかったことに…」
男の横顔をちらと見ながら、少しだけ、言いたいことが言えた。
「それはあかんな」
男はぴしゃりと言った。
「遙は、逆ろうたらあかん。ワシの言うことを聞いとったらええのや」
男は手前勝手な論理を強いた。
「い、いつまで…」
「いつまで? しばらくの間や。ワシが飽きるまで」
「…飽きるまで…?!」
「そや。1週間先か、1年先か、分からんで。けど、ま、お兄さんが遙に飽きる迄の間の遊び相手や。飽きたら無罪放免したる。それまでの辛抱やな」
男はそう言い放った。そうして笑う。
遙の髪に指を差し入れ、自分に引き寄せた。
「そう嫌そうな顔をすな。よけいやりたなる」
遙の意志はなしなのか?…
いやそうな顔をしたらつけ込まれる。
二進も三進も行かぬ所へ追い込んでゆく、それが男のやり方なのか。
でも何のために。
口封じ…?
それだけのことで、ここまで手間をかけるのか?
もう、逃れられないのか?
逃れられない先には、何が待っているのか。
「雨が降って来たな」
男が身支度をしながら言った。
初夏の夜の外に、雨の音がした。
「これ置いとくさかい、持っとれ。鍵掛けて出ぇよ」
雨は止む気配がない。
もう梅雨なのかもしれない。
この先、どうなるのか。
遙には分からない。彼には、決定権はないのだ。
サイドテーブルを見ると、男が置いて行った合鍵があった。
- To Be Continued -
男の関西弁は、京都弁でもなさそうです(創作?)。 SEXシーンはほとんど受け売りです(^_^;)BL小説を参考にしているだけ(何だかな…)。
結末が作れなくてだらだらと伸びてしまいました。
この話は、シリーズとして続きます(予定)。