Story

紺青の海の行方

05/9/4

3

 

言われたとおり四つ這いになろうとしたが膝が立たず、ベッドにうつ伏せの形になってしまった。

男は黙って遙の上に伸しかかった。

遙の首筋に唇を這わせて来る。

「……」

手が遙の肩から胸へとゆっくり滑り、乳首へ到達した。

あやすようにそれを、男の手が揉みしだく。男の指が巧みに遙を昂めてゆく。

女にするような愛撫を施されて、身体が震えた。

舌が、首筋から背を這い回っていた。

男の愛撫は丁寧で巧みだった。

気味が悪いほど、優しかった。

身体の敏感な部分を刺激して、ゆっくりと追い詰めていく。…女として扱われていると、思った。

男が遙の顔を仰向かせ、唇を塞いだ。

口をこじ開けられ、舌を激しく吸われる。

頭のてっぺんにまで快感が走った。

男の舌が遙を追い、遙が応えるまで口腔の中で遙を蹂躙する。

女の子と交わしてもこれほどの快楽を味わったことがなかった。

口付けだけで、身体が溶けてしまいそうだった。

男の指が、遙の腰を捉え、そこを犯し始めた。

「あっ」

腰が引けた。

この前の時の痛い記憶が身体に残っていたのだ。

男が宥めるように遙の唇を塞ぎ、指で後ろを解す。

「遙はまだ、酒が残ってるな。…身体が桜色や」

男が低く囁いた。

 

解され、施され、液体で潤されても、痛みは起った。

痛みの他に、力で適わぬゆえに男に穢されたという思いが立って、貫かれることに屈辱を感じる。

だがすぐに感情はなくなり、男の動きを追うだけになった。

腹の中で蠢く異物の大きさと異様な感覚に、なにも考える余裕がなくなってしまうのだ。

快感よりも、圧迫感に支配される。

「前立腺マッサージて知ってるか」

突然背後から昏い男の声がした。

「女にしてもらうよりワシの方がええかもしれへんぞ」

男が身じろぎした。拍子に遙の身体も浮く。

遙の持ち上げた腰に、平行に自分の腰を男が穿つ。

「あっ、ああっ…、」

下半身から、脳天まで一気に鋭い快感が貫いて行った。

男が狙いを定め、腹の中の一点を責めて来た。

突かれる度に身体全体がスパークする。

切ないような、甘いような気持ちが溢れ、訳もなく何かに縋りつきたくなる。

遙の前の部分が刺激され、ビクビクと脈打つ。

男がそれをぎゅっと握り締め、後ろを深く穿って動きを止めた。

「ええやろ」

「うう…うう」

このまま快楽を解放して欲しい。

早く楽にして欲しい。

男がまた唇を貪る。

そうして、遙の片方の足を持ち上げるとぐるりと身体を反転させ、繋がったままで遙を仰向きにした。

あられもない姿が男の眼の前に曝される。

勃ち上がったそこを手で隠そうとすると、その手を封じられる。

腰を持ち上げられ、膝を抱えられて、男の抽送を受止めさせられた。

声を出したが、自分でぞっとするような甘ったるい声だった。

「―――っ」

男が、遙を狂わせる部分を、再び正確に突いて来た。

「い、いやだ…」

遙が伸し掛かっている男の身体を押しのけようとする。

その手も簡単に絡め取られ、掴まれてベッドの上に張り付けられた。

「あ――っ」

他愛もなく遙は極まり、自分の腹の上を汚した。

 

***

 

呼吸が整って来たころに、男がベッドに戻って来た。

寝室にある小さい冷蔵庫からスポーツ・ドリンクを取り出して来る。

同じものが一ダース入っていた。

男は一口飲んでサイドテーブルに置き、遙の横たわるベッドの横に腰掛けた。

ティッシュを摘み上げ、遙の尻に当てる。

「いきめ」

「す、すみません。自分で、します」

男に借りを作りたくないとばかり、男の手からティッシュを奪って、遙は自分の身体を拭いた。

「…アホ」

男はもう一度ドリンクを飲んだ。

「遙の身体はまだ桜色や」

どきりとした。

急速に襲って来た性の愉悦が、頂点を極めたあと嵐のようにさっと引いてしまい、忘れ去った今は、先ほどの狂乱を思い出したくもないのだ。

 

男にドリンクを勧められ、一口飲んだ。

寝室に、ごくりと飲み干す音が響く。

「―僕を、あの」

遙は言い淀んだ。

「鴨川に浮かべるつもりですか」

男は怪訝そうに遙を見、そして一瞬ののち何ごとか思い出したように苦笑した。

「鴨川で泳ぎたいんか。鴨川は川底が浅い。膝までもあらへん」

「…そうなんですか」

間抜けな返事をした。

「―僕を、…殺すんですか」

「アホ、ワシをヤクザみたいに言うな」

「――。」

「恐いか」

男がもう一度スポーツドリンクを手に取る。

「ワシが恐いのか」

「―恐いです」

男はまじまじと遙を見た。

恐いと言ったが、落ち着いているようにも見える。

男の欲望をすでに受け止め、処理を終り、自分の欲望も吐き出したあとの今は、遙の気持ちも少しは楽になっていたのかもしれない。

 

男はベッドの端に腰掛けたまま、遙に手を伸ばして、遙の身体を後ろから抱きすくめた。

「遙は可愛い」

そう言って、遙のむき出しの肩に、唇をつけた。

「何も恐がることはあらへん。いやな思いはさせへん。遙は女以上や」

さらっとそう、口にした。

男の手が、遙の髪を撫でる。

 

「…」

遙は男の抱擁を逃れた。

男の言葉を聞かなかったことにしたい。

男の罠から、逃れたいのだ。

次に言うべき言葉を必死で探した。

「…何もされなくても誰にも言うつもりはなかったです。全部忘れてしまうつもりです。…だからもう、終りにしてください、なかったことに…」

男の横顔をちらと見ながら、少しだけ、言いたいことが言えた。

「それはあかんな」

男はぴしゃりと言った。

「遙は、逆ろうたらあかん。ワシの言うことを聞いとったらええのや」

男は手前勝手な論理を強いた。

「い、いつまで…」

「いつまで? しばらくの間や。ワシが飽きるまで」

「…飽きるまで…?!」

「そや。1週間先か、1年先か、分からんで。けど、ま、お兄さんが遙に飽きる迄の間の遊び相手や。飽きたら無罪放免したる。それまでの辛抱やな」

男はそう言い放った。そうして笑う。

遙の髪に指を差し入れ、自分に引き寄せた。

「そう嫌そうな顔をすな。よけいやりたなる」

 

遙の意志はなしなのか?…

いやそうな顔をしたらつけ込まれる。

二進も三進も行かぬ所へ追い込んでゆく、それが男のやり方なのか。

でも何のために。

口封じ…?

それだけのことで、ここまで手間をかけるのか?

もう、逃れられないのか?

逃れられない先には、何が待っているのか。

 

「雨が降って来たな」

男が身支度をしながら言った。

初夏の夜の外に、雨の音がした。

「これ置いとくさかい、持っとれ。鍵掛けて出ぇよ」

雨は止む気配がない。

もう梅雨なのかもしれない。

この先、どうなるのか。

遙には分からない。彼には、決定権はないのだ。

サイドテーブルを見ると、男が置いて行った合鍵があった。

 

- To Be Continued -

男の関西弁は、京都弁でもなさそうです(創作?)。

SEXシーンはほとんど受け売りです(^_^;)BL小説を参考にしているだけ(何だかな…)。

結末が作れなくてだらだらと伸びてしまいました。

この話は、シリーズとして続きます(予定)。

series top

HOME : Story

2style.net