Review

講談社現代新書

武士道とエロス

1995年

氏家幹人

講談社

07/6/20

日本の膨大な文献の中から、男色が、日本の歴史においてひとつの文化であり、ごくあたり前に行われていた習俗であったことを検証する労作であり、古典的名著であるが、「江戸の男色」という、江戸期の男色図のコレクションを収めた新書が発売された今は、些か古さを感じてしまうかもしれない。

けれどもこれが、日本の男色研究の重要な書であることには変わりがない。

好き者、または男色、という言葉に無意識に反応してしまう女子ならば、絶対に持っているべき1冊であり、そのような女子に密かに礼賛されて来た伝説の書である。

 

序章は、信長の草履を温めたという秀吉の伝説を疑問視する。そして、江戸時代に起きた仇討の記録から男色の気配を感じ取る第一章。

第二章は明治時代に飛び、明治時代に行われていた薩摩での習俗と、その時代の小説。

そして武士の時代の武士道と男色の関係、江戸時代、主君と家来、或いは義兄弟の契りにおける男色。

江戸時代末期には衰退してゆく男色風俗。それを武士の習俗の変化によるものと分析する第5章。

そして最後に、男の容貌、男の美醜を日本人はどうとらえていたか…、男性に対する美意識を考察する終章。

武田信玄の有名な、愛する少年に宛てたラブレター(弥七郎伽に寝させ候事之なく候(中略)なかんずく今夜は存じも寄らず候の事)が載せられているのもこの本。

 

男色の風俗は、日本の歴史において当たり前の習俗だっただけではなく、日本の社会で欠くべからざるシステムを形作っていた、とも言えるだろう。

氏家氏のこの労作に出て来る大量の証拠物件(?)、大量の記録をを読めばおのずとそう思えて来る。

この力作がいつでも手に取れる新書で発売されているのもありがたい(現在ではカバーが変わっています)。やおいだけでなく、全日本人必読の書だと思うのだが。

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