Review

光文社文庫

花夜叉殺し

赤江瀑

光文社

2007年

2007/6/16

赤江瀑は日本やおい史上、日本ホモ小説史上、忘れてはならぬ作家である。

その彼の作品集が光文社で再登場したので、早く取り上げたいと思っていた。何やかやで遅くなってしまったが、とりあえず紹介しておこう。

この光文社版は、ほぼ同時期に三冊の短編集が発売され、この「花夜叉殺し」にはあの「獣林寺妖変」が収められている。
それだけで私は買った。

 

「獣林寺妖変」こそ、日本やおい史上、日本ホモ小説史上(何度もうるさいわ!)最大級に重要な作品であって、私にはとても懐かしい作品でもある。

獣林寺というお寺が本当に京都にあると思い込んでいたし(モデルになった寺はある)、「京都三条御幸町の暖簾の古い旅館であった」などというフレーズに痺れまくったものだった。

まあ昔話などどうでも良い。

中井英夫がこれをけなしたという話も有名なのだが(角川文庫版の解説)、そしてそのわけもとても良く分かるのだが、その欠点をも上回る魅力があることも確かなことだ。

「男がなくちゃ生きてけない体」って、どんな体なんだろう、などと一生懸命考えたものだった…。

*

 

この光文社文庫版に収められているそのほかの小説は、読んだものもあり、知らなかったものもあった(「獣林寺」以外はホモはあまり出て来ない)。

全部読んでいないが、あらためて読んだ限りでは赤江瀑がいかにいやらしいかが再確認出来た。

とにかくいやらしい。発想がいやらしい。記述がいやらしい。
それもむっつりすけべタイプだ。

いやらしいことを具体的には何ひとつ書かない。ほのめかすだけなのだ。

例えば「千夜恋草」では「僕は、あの女の性器を知っている」「あの男の性器も、知っているんだ」

わずかこの二行のみで、あとは読者の想像力まかせ。何が起ってどうしたか、なにも書いてないのにこのたった二行のいやらしさ。

そしてたった二行で最後まで引っ張ってゆく。ああいやらしい。このいやらしさは天才的だ。とにかく一読に価するいやらしさであることは保証出来る。

 

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